小説置き場参

夢嵐

1話:霧の雫

 時は、未来。そう発展している風でもなく、ごく最近の未来。その
未来の中にある『私立雪渓中学高等学校』。
「高来!そっち行ったよ!」
「わかってるって・・・」
 黒い影が学園の中を飛び回る。それを追う二人の少年。
「そんなこといいながらー!!逃げてるよあいつー!!」
 小さい背の少年が[高来]に反論した。
「あ~・・・ごめんごめん」
 やる気もなく、のほほんとしている高来。ちなみに隣りの彼は[龍夜]という。
「もぉーイライラするぅー!!」
 痴話喧嘩を続ける二人に向けて、黒い影が針を発射した。
「うわぁっ来たよー!高来ぃ~!!」
「わかってるって・・・」
「それ絶対わかってないー!!」
 龍夜はぴょんと飛び、発射された針をかわす。――と思ったら、ずるりと
すべってころんだ。
「ぅわあぁっ!?」
「・・・なぁにやってんだか・・・」
 高来が頭にさしていた羽を一本とり、ふっと息をふきかける。すると、
羽は宙を舞い、黒い影を念で縛る。

「滅」

 その一言で、黒い影――獣の形だとわかった――が消えうせた。
「お兄ちゃん、龍夜君ー!」
 窓の下から声が聞こえた。
「あ、翼・・・下の魔物はどうなったー?」
 高来は窓の下へ、彼女に向って話し掛ける。
「それがねぇ・・・悪戦苦闘してるみたいなのよ、彼」
「・・・あっちゃー・・・」
 高来は窓から飛び降りて、下へ着地した。龍夜もむくっと起き上がり、
それに続く。
「なんでおいていくのさっ高来ぃー!!」
「ぐずぐずしてると、おいていく。それが普通」
「・・・なら、今までたくさん待ってきた僕の立場は・・・?」
 大きく溜め息をつき、高来・龍夜・翼は[彼]の所へと向った。

「どぅわぁー」
 遊んでいるようにしか聞こえない叫び声が聞こえた。
「えっらいふっとばされたわー。俺ももう歳か」
「何じじ臭いこと言ってんですか、陸先輩」
 高来は[陸]の隣りについた。
「おぉ、高来。そっちは片付いたんか。ま、2人がかりやしな、当然やわ」
「いえ、あいつはすべって転んでただけですよ」
「きぇーいっ高来の馬鹿ー!!」
 陸たちの前に居たのは、先ほどの獣よりは緑がかっているものだった。
大きさも少し大きい。
「なるほどー。これじゃ、もう歳ぃ~な陸先輩は勝てませんねぇ」
「あんまそういうこと言うん、たいがいにしいや。ま、それはさておきーっ
 滅するか!」
「きりかわり早っ」
 翼もなんとか男性陣に追いつき、並ぶ。
「じゃ一緒にいこっか!」
 龍夜が明るい声で言った。

 そんなこんなで、数体いた魔物たちは全部いなくなった。
「ふぃ~・・・けっこーいたねぇ、今日」
 翼がのほほんと言った。――この学園は、今居る四人により平和を
保っている。というのも、数ヶ月前のことだった。魔界につながる穴が
開いてしまったのである。
 その穴をふさぐのには、霧の雫という宝石が必要になる。[霧の雫]は
たまに魔物が持っているという――。
「一体、いくつ集めたらいいんだ?っていうか、全部で何個あるんだ?」
「さあ?」
 前途多難である。

続く


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